セイバーベット Antigenne社から販売されているAvian Influenza Virus H5 Antigen Rapid Testは、喉頭分泌物/咽頭ぬぐい液サンプル中のAvian Influenza Virus H5 (AIV H5)の特異的抗原の定性検出を目的としたラテラルフロー免疫測定法です。この検査はAIV H5感染の判定に有用です。
説明
鳥インフルエンザウイルス(AIV)は、オルソミクソウイルス科インフルエンザAウイルス属に属する高度に変異しやすいウイルスである。H5抗原は鳥インフルエンザウイルスの重要な血清型であり、特にH5N1やH5N6などの亜型は家禽やヒトに対する病原性が高いため、非常に懸念されている。
特徴と抗原性
特徴
ゲノム構造:
鳥インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、そのゲノムは8本の一本鎖負鎖RNAセグメントからなり、それぞれが1つ以上のタンパク質をコードしている。
H5抗原には主にヘマグルチニン(HA)タンパク質が関与しており、ウイルスの接着と宿主細胞への侵入を担っている。
ヘマグルチニン:HAタンパク質はウイルス表面の糖タンパク質で、16の血清型(H1-H16)に分類され、H5はその一つである。HAタンパク質は宿主細胞表面のレセプターと結合し、ウイルスの細胞内への侵入を媒介する。
抗原変異:鳥インフルエンザウイルスは抗原ドリフトや抗原スイッチングを起こしやすく、新しい亜型の出現や流行につながる。H5亜型の中でもH5N1は最も代表的で病原性の高い亜型の一つである。
抗原性
免疫原性:H5抗原は免疫原性が高く、HAタンパク質に対する中和抗体の産生を誘導する。中和抗体はウイルスが宿主細胞に侵入するのを防ぎ、免疫防御を提供する。
交差反応性:異なるH5亜型間でいくらかの交差免疫が存在する可能性があるが、通常、交差防御は限定的である。抗原変異のために免疫逃避が起こりやすく、ワクチン開発の課題となっている。
臨床症状と重症度
家禽の症状
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI):
急性発症:感染後短期間で発症し、急速に経過する。
死亡率が高い:特にニワトリと七面鳥の死亡率は90-100%に達する。
典型的な症状:抑うつ、食欲不振、呼吸困難、赤痢、出血、頭頂部と肉ひげの水腫。
低病原性鳥インフルエンザ(LPAI):
軽い症状:咳、くしゃみ、涙などの軽い呼吸器症状。
卵生産量の減少:感染鶏の卵生産量は有意に減少した。
人間の症状
インフルエンザのような症状:
発熱、咳、喉の痛み、筋肉痛、頭痛。
重度の症状:
重症肺炎、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全。
高病原性H5亜型感染症における急速な悪化と高い死亡率。
感染経路
直接接触:家禽から家禽への感染:感染した家禽またはその分泌物や排泄物との直接接触により伝播する。
ヒトと家禽の接触:感染した家禽、またはその分泌物や排泄物に直接接触することで、ヒトはウイルスに感染する。
環境感染:汚染された水、飼料、食器などを介して間接的にウイルスに感染する可能性がある。
空気感染:ウイルスは空気中の飛沫を介して、特に閉鎖された換気の悪い環境で感染する可能性がある。
臨床診断
臨床症状の観察:家禽またはヒトにおける典型的な症状に基づく予備診断。
臨床検査PCR:逆転写PCR(RT-PCR)による呼吸器検体中のウイルスRNAの検出は、迅速で感度の高い検査である。
ウイルスの分離:ウイルスを培養し同定するために、罹患した鳥や患者のサンプルからウイルスを分離する。
血清学的検査:血球凝集阻害法(HI)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて血清中の抗体を検出し、感染および免疫反応を評価する。
迅速診断試薬:初回スクリーニングには迅速抗原検出キットを使用するが、検査室での確認が必要。